第四百韻 『初しぐれ』の巻
2010.11.08~2010.11.30
1 発句 初しぐれ烏はつばさ蓑として 冬 不夜
2 脇 炭焼小屋の軒に隠れぬ 冬 彼郎女
3 第三 金銀にまさるものこそ子供なれ 私
4 日記の綴目指でなぞりつ 草栞
5 日めくりの格言よめる祖母のいる 百
6 スローフードの雄は漬物 私
7 つけにくい句で案じつゝながら喰ひ 私
8 頬杖ついてカフェのテーブル 不夜
初ウ
9 もみづれる出金ばかり小使い帳 秋 百
10 天を仰げばあかあかの月 秋月 氷心
11 台風の過ぎたるあとに家を出て 秋 ふない
12 顔覗き合ふ向かう三軒 不夜
12 舫いを解くタオル鉢巻 氷心
13 交替で見張りせんとて寝ずの番 栞 両句に
14 意図を超えたり火と土の芸 私
15 終日を飽かずにさする楽茶碗 不夜
16 ふらちな孫は夜も帰らず ふない
17 舞ひ散れる花にこころを酔はされて 春花 郎女
18 あらたな恋を誘ふ春風 春恋 私
19 スカートに浮気募れる半仙戯 春恋 栞
20 ちらちらひとを見あふ公園 私
21 朝曇イーゼル立てる場所探し 夏 不夜
22 猛暑見越して大樹の陰へ 夏 百
二オ
23 弱きものにはそれなりの対策を 郎女
24 腰丈ほどの雪吊の松 冬 ふない
25 わづかなる賀状を出してするあんど 冬 私
26 Eメールにはせぬがこだわり 郎女
27 物を売る前に売りたいあばた面 氷心
28 駱駝の背より月を眺めて 秋月 栞
29 地平線夜寒に遠きけふの宿 秋 不夜
30 刈田の中を一筋の川 秋 私
31 嫗逝き藜の杖を残しおり 百
32 賢者の遺志を守るハリーよ 栞
33 選ばれし者を動かす使命感 私
34 背すじ伸ばして身じろぎもせず ふない
35 宮殿の門の左右に近衛兵 不夜
36 素知らぬ顔で文あずかりぬ 恋 郎女
二ウ
37 ベンチにて待てば異国の女あり 恋 ふない
38 見つめられては言葉はいらぬ 恋 百
39 長過ぎる路駐店主に咎められ 栞
40 ときに役立つへりくだる質 私
41 内定をすぐ知らさるる面接後 不夜
42 スーツのままでゼミに飛び込む 郎女
43 花盛り写メールしては送りつけ 春花 百
44 小腹の足しに桜餅で茶 春 私
45 朝寝して飯の時分は過ぎにけり 春 ふない
46 今夜も見るぞ流星群を 秋 百
47 山際を明らめぬうっと居待月 秋月 私
48 雁の音聞きてそぞろ侘しき 秋 栞
49 ずるずるとすする昼餉のカップ麺 不夜
50 忘年会の只酒うれし 冬 ふない
三オ
51 冬の薔薇散りなば人の寡黙なる 冬 百
52 身悶えしのぶ倫ならぬ恋 恋 私
倫(みち)
53 歳の差はあれど楽園ともにせん 恋 栞
54 胸の疼きに嘘はあらざり 恋 不夜
55 糊付けて箪笥にしまふユニホーム ふない
56 年金生活いつまで続く 百
57 粗食でもうまく感じる空きっ腹 私
58 持ちつ持たれつ齢をかさね 百
58 養生訓で狙ふ大台 私
59 気がついて紙釜敷に熨斗を添え 栞 両句に
60 門で見送る正月の客 新年 氷心
61 初富士に胸がおのづと張りにけり 新年 私
62 こもよみこもち若菜摘みつつ 新年 不夜
63 をとめらのすそは濡れけんはだれ雪 春 私
64 雛の家にも戻る賑ひ 春 栞
三ウ
65 赴任地の土産は菓子と蕗の薹 春 ふない
66 嫁になる人ひとつ年上 恋 氷心
67 月照らす波は涼しきランデブー 夏月恋 不夜
68 熱き口づけ海霧の彼方へ 夏恋 栞
海霧(じり)
69 長廊下彼の背中について行く 恋 百
70 木造校舎は暗く冷たし ふない
71 日当たりに放られている雪だるま 冬 氷心
72 着膨れせずに着るが今流 冬 私
73 ファッション誌抜け出たやうな少女たち 不夜
74 お国訛りで笑いさざめく ふない
75 ばっちゃにも打ち明けられぬ弱味あり 栞
76 身の上かさね余花を泣くらん 夏花 私
77 ふうわりと黒き日傘を撫でる風 夏 郎女
78 サマルカンドの白き街並 不夜
名オ
79 玄奘と魑魅魍魎の足かるく ふない
80 盃の猿酒ゴクと呑み干す 秋 栞
81 玉兎からまづ薀蓄をかたむけて 秋月 私
82 草屋閉めて自然薯ほりへ 秋 百
83 待ちかねの庭の梢に小鳥来る 秋 不夜
84 幼子どもの瞳うつくし 郎女
85 毀たれし大尖塔を見上げをり ふない
86 高度成長今や伝説 私
87 ジパングで銀河鉄道乗車券 百
88 時空の旅はImagination 私
89 火の鳥も甦りては永遠に生き 栞
90 最終巻につかぬ決着 不夜
91 打ち切りの運命かなし冒険譚 ふない
92 ホームページに寄せる荒波 郎女
名ウ
93 いっぱしの批評家きどりカキコして 私
94 花の名所は屋台ひしめく 春花 私
95 春鹿を追えど聞こえぬ素振なり 春 ふない
96 若芝萌えてあをむ山肌 春 私
97 潮の香の道を遍路のあゆみゆく 春 不夜
98 悟りの境地何処に在りや 栞
99 物語など思はせる鐘の声 郎女
100 午後の古文の授業まどろむ 私
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