第五百韻 『コーヒーの』の巻
2010.12.09~2010.12.31
1 発句 コーヒーの運ばるる間に冬日落つ 冬 ふない
2 脇 胸にボーナスあるも一刻 冬 私
3 第三 寄り道をするか否かの思案して 不夜
4 目抜き通りに点る街灯 草栞
5 買ひ物は苦行に似たり荷物持ち 私
6 母娘のきづな再確認す 彼郎女
7 みどり児を懐きて盆の里帰り 秋 私
懐き(いだき)
8 渋滞つづく山の端を月 秋月 不夜
初ウ
9 とりあえず夜食に何か見つくろひ 秋 栞
10 睡魔と戦ふサッカー観戦 私
11 実況のうるさき声も気にならず 郎女
12 太子さながらながら勉強 私
13 山当ての名人なれば秀才に 栞
14 団扇の風を送り鼻歌 夏 不夜
15 夕涼み頬のほてりはおさまらず 夏 郎女
16 人目気にせぬキスの不意打ち 恋 私
17 コミケまで誘はるるまま初デート 恋 不夜
18 なりきり過ぎて逃避行へと 恋 栞
19 世はみなが役を演じる舞台とや 私
20 秘すれば花の心地こそすれ 春花 栞
21 春泥に靴跡の癖暴かれて 春 不夜
22 野掛けに浮かれる老いの童心 春 私
二オ
23 想ひ出のあとさき分かち難くなり 栞
24 放置していたブログ見返す 郎女
25 継続は力と訓示子に垂れて 私
26 ハローワークへ通ふせつなさ 不夜
27 旧友と再会すれど愚痴ばかり 郎女
28 くすぶる炭を寄せて一息 冬 栞
29 島の灯のかすめる夕べ雪もよひ 冬 私
30 瀬戸内海もやや波立ちぬ 不夜
31 開戦の報駆け廻り緊張す 栞
32 離婚届が最終兵器 郎女
33 目をつぶる限度はケースバイケース 私
34 釣瓶落としにまだ鬼ごっこ 秋 不夜
35 穂すゝきに隠る坊主を照らす月 秋月 私
36 遠近にきく砧淋しも 秋 不夜
遠近(おちこち)
二ウ
37 こぬひとをまつあきかぜのすさむみに 秋恋 私
38 せめて形見の香焚きしめむ 恋 不夜
39 ロケットの写真の謎は解けぬまま 栞
40 華麗な推理冴えるホームズ 私
41 愛用のパイプを指にもてあそび 不夜
42 息子のTASPO密かに借りぬ 郎女
43 コンビニの跡は野晒し販売機 私
44 倒れる前に水分補給 栞
45 苦しさに楽しむ余裕ある登山 私
46 里は畑焼くけぶり幾筋 春 不夜
47 はろばろと走る川面に風光る 春 私
48 花の散るごと揺れる浮き舟 春花 郎女
49 春暁に俤人が夢に立ち 春 栞
50 はつと覚めれば雉子のこゑなり 春 私
三オ
51 二日酔ひ指もてほじる耳の穴 不夜
52 遅刻は緩みとこごとうだうだ 私
53 壁時計故障したるを忘れをり 郎女
54 所構はず腹の虫鳴く 栞
55 遠巻きにただ見の餓鬼の紙芝居 私
56 語るも聞くもみな玉の汗 夏 不夜
57 熱帯夜門々そゞろ道に出て 夏 私
58 ともに歩みしひとを偲ばん 恋 郎女
59 別れても末に浄土で逢はんとぞ 恋 栞
60 誓ふた顔もしかと覚えず ふない
61 証言に私語かまびすき裁判所 不夜
62 躱しうそぶく食へぬ政治家 私
躱し(かわし)
63 スクープは夜討ち朝駆け隠し撮り 不夜
64 朱に染む月に気づかないまま 秋月 郎女
三ウ
65 ジャズナンバー身に入むやうにスイングバイ 秋 栞
66 蔦這ふ壁にスプレーの文字 秋 不夜
67 アートとは規範を超えるものぞかし 私
68 世に隠るるをさらに厭はず 不夜
69 あこがれの内が華とは知りながら 私
70 追っかけしては何処か虚しき 栞
71 開通式けふはいづくと西東 不夜
72 槌音ひびく谷間の町 ふない
73 隠口の初瀬に宮居したまひて 私
隠口(こもりく)
74 残る氷を踏み駒を駆る 春 不夜
75 名にし負ふ臥龍栖むとや春の郷 春 私
76 塔の上より朧見渡し 春 栞
77 花片を地に落さぬは風の脈 春花 不夜
78 自然かうべの下がる義士祭 春 私
名オ
79 各々に異なる思ひ裡に秘め 栞
80 親しく言葉かはすオフ会 不夜
81 男かと決めつけ逢へば女なり 郎女
82 望まれ産まれし子こそ幸せ 私
83 今宵しも主の降誕を誉め称へ 冬 栞
84 歌ひ継がるる古き旋律 不夜
85 日本に弥栄あれや千代の春 新年 私
86 民が竈に嫁が君出づ 新年 不夜
87 丑寅の方位護りて福来たる 栞
88 援軍見ゆと出城沸き立つ 不夜
89 風向きや都合で変はる敵味方 私
90 オセロゲームに一喜一憂 栞
91 短夜にはや月白む窓の外 夏月 不夜
92 庭を見やれば手花火の屑 夏 郎女
名ウ
93 はだけたる浴衣なほしつ聞く鼾 夏 私
94 ナルコレプシー治ったかしら 栞
95 暖房の電車の揺れの心地よさ 冬 不夜
96 匂ふ乙女ら入り来花やぐ 雑花 私
97 初ざくらシートの番は若い衆 春 私
98 青きを踏めば弾むおしゃべり 春 不夜
99 山脈に積もる淡雪薄化粧 春 栞
100 春よ春よとうぐひすの鳴く 春 私
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