第六百韻 『鴛鴦や』の巻
2011.01.21~2011.02.18
1 発句 鴛鴦や川面を撫でる明けの色 冬 郎女
2 脇 陽あたり側に笑まふ早梅 冬 私
3 第三 とり出だす句帳はいまだ白紙にて 不夜
4 ポットで淹れる煎茶一服 草栞
5 あれこれとまんじゅう試食ほぼ手ぶら 私
6 ケチケチ・ツアーはせこさ慣らしむ 私
7 検索の労を厭はず月の宿 秋月 不夜
8 柞紅葉にかかる湯けむり 秋 私 柞紅葉(ははそもみぢ)
初ウ
9 ボジョレーを楽しみにして風呂上がり 秋 郎女
10 髪かきあげる君はセクシー 恋 私
11 天才の描く女神に一目惚れ 恋 栞
12 こころ浮わつく彼に肘鉄 恋 郎女
13 大南風走り出したら止まらない 夏 不夜 大南風(おおみなみ)
14 グランドに水を撒く一年坊 夏 ふない
15 信ずべしおのが無限の可能性 私
16 賞受けたるは通過点にて 栞
17 あへぎつつペダルを漕いで峠越え 私
18 雪消しずくに喉をうるほす 春 不夜
19 月の出もいつとは知れず花朧 春花月 栞
20 きーこきーことふらここが鳴る 春 私
21 メーデーの行列すぎて人まばら 春 不夜
22 独身寮に届く絵手紙 郎女
二オ
23 ざらざらと洗ふた箸の乾く頃 ふない
24 そば屋の夕の仕込み始まる 私
24 エコの参加はリサイクルから 私
25 天ぷらの揚げ油にもこだわりを 郎女 両句に
26 手抜きをしないプロとアマの差 私
27 入念にからだほぐしていざ本番 不夜
28 寒声高く洩れ聴こえたる 冬 栞
29 マフラーを忘れて戻る細き路地 冬 ふない
30 作家志望の彼は太宰似 恋 私
31 女生徒の淡き想ひに気がつかぬ 恋 郎女
32 実習期間済めば去る人 恋 不夜
33 ”農業の体験”実は嫁募集 私
34 休耕田で吠える柴犬 ふない
35 夕月に出で来る鹿の光る目見 秋月 私 目見(まみ)
36 獣舎の掃除終へてやや寒 秋 不夜
二ウ
37 揃ひ踏み時代祭のエキストラ 秋 栞
38 差し入れられた兵糧を食ふ ふない
39 奉仕とは清々しきや道普請 私
40 大師の指図響く夏空 夏 不夜
41 水喧嘩いつのまにやら鎮まりて 夏 郎女
42 明けは撤回戻り梅雨とか 夏 私
43 メンバーもファンもやきもきカラ騒ぎ 栞
44 ツイッターには謎のつぶやき 不夜
45 どこまでをまこととするや万愚節 春 郎女
46 往く手遥かに蜃気楼立ち 春 栞
47 啄木忌海峡の町墓地の坂 春 ふない
48 たちまち髪をみだす春風 春 私
49 指名にてマイクを握る花の宴 春花 不夜
50 紙のコップに佳き酒を注ぐ ふない
三オ
51 軒先に杉玉青し蔵開き 私
52 ネットショップへ増ゆるアクセス 不夜
53 大道の声懐かしや叩き売り 栞
54 ついふらふらと釣られさうなり 私
55 相席は苦み走った好い男 不夜
56 ニッカボッカの鳶職の群 ふない
57 外人の目にはクールと映るらし 私
58 屋根の間に覗く初富士 新年 栞
59 武蔵野の台地が河に果つところ ふない
60 百万都市へと治水埋め立て 私
61 絶えんとす動植物の種のあはれ 不夜
62 さてもクニマス発見あっぱれ 私
63 仰天のセレンディピティなればこそ 栞
64 偶然はみな摂理なるらん 私
三ウ
65 逍遙のアリストテレス深き皺 不夜
66 アテネの庭に不穏なる風 郎女
67 かはらけを投げて厄除したくなり 栞
68 湖に舟出す黄昏の頃 不夜
69 寒鮒を漁る網の生臭さ 冬 ふない 漁る(すなどる)
70 粕汁をもて君を待ちをり 冬恋 郎女
71 誰がためにみがくや白き泥大根 冬恋 私
72 黒のタイツに悩殺されて 恋 栞
73 われを厭ふ娘に媚びて宝塚 私
74 冷めたる体で買ふ乙女餅 ふない
75 おぼろ月旅は帰りの虚しかり 春月 私
76 別れを告げる引鳥の群れ 春 栞
77 この花をユーラシアにて眺めむと 春花 ふない
78 桜の苗木を贈り交流 春 私
名オ
79 友情は文化の垣根越ゆるもの 不夜
80 ひらがな書きのメール行き交う ふない
81 誤変換の指摘合戦疲れ出て 私
82 目頭押せば暑さくらくら 夏 不夜
83 クーラーに頼らぬ主義と強がりて 夏 郎女
84 頬ふくらませ瓜を食ひたり 夏 私
85 勧められ片腹痛し居候 栞
86 身分違ひでのれぬ縁談 私
87 三畳の応接室に栗羊羹 秋 ふない
88 色なき風の忍び込む窓 秋 不夜
89 有明に去りにしひとの残り香に 秋月恋 私
90 悲しき天使聴きて泣き濡れ 恋 栞
91 根拠なく自信と夢に満ちし日々 私
92 人を傷つけ人に傷つき 不夜
名ウ
93 荒野行けば夜毎けものの声を聞く ふない
94 孤独はきつと成長の糧 私
95 ファイバーに光一筋通るまで 栞
96 暗中模索も無駄でなかりき 私
97 雪どけに一息つきて交わす笑み 春 郎女
98 浮かるるごとく蝶も舞ひ出づ 春 不夜
99 花咲けば人の賑はふ城跡に 春花 ふない
100 余韻はかなき弥生狂言 春 栞
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