第三百韻 『岨道や』の巻
2010.10.03~2010.10.27
1 発句 岨道や露にそぼ濡れ鳥かぶと 秋 私
岨道(そばみち)
2 脇 渓雲湧きて秋天に風 秋 百
3 第三 弦月に汝が龍笛は届くらん 秋月 氷心
龍笛(りゅうてき)
4 即興ながら琵琶を奏でて 草栞
5 物怪が似つかわしけり古き宿 彼郎女
6 なにはなくとも生き返る湯よ 私
7 のびのびと手足のばせるこの空間 不夜
8 黒一点のエアロビックス 私
初ウ
9 イクメンの襁褓とりかえ板につき 百
10 いまさらながら親の恩知る 不夜
11 望郷は金木犀の香とともに 秋 がじゅまる
12 君の離縁を聞けば稲妻 秋恋 私
13 夜に宴月が見えぬも覚悟して 秋月 青豆
13 月光を映す瞳のボルテージ 秋月恋 栞
14 薄野原に使者を討つ武士 秋 青豆
両句に 薄(すすき)
15 我が代にて因果の流れ絶たんとし 郎女
16 買い漁りたる占いの本 不夜
17 ゴミに出すときにも要す思ひ切り 私
18 舞台の上に霞たなびく 春 栞
19 あげひばり王朝あとは田面にて 春 私
田面(たづら)
19 差し金と思えぬほどの蝶の舞 春 青豆
20 春袷の身そゝとつくろふ 春 私 19両句に
春袷(はるあわせ)
21 お開きに致しませうか花の宴 春花 郎女
22 迎え待つ間にルージュを引いて 恋 百
二オ
23 懲りもせぬ浮気心を弄び 恋 栞
24 ただ人間の業の深さよ 不夜
24 酔夢に妻子の出で来目覚むる 私
酔夢(すいむ)/妻子(めこ)/出で来(いでき)
25 たがために鐘は鳴るなり浮寝鳥 冬 百
26 形さまざまに蓮の立枯れ 冬 私
形(なり)
27 柵を越え身を低うする寒の釣 冬 ふない
28 新発売の道具試さん 不夜
29 何度目の挑戦かしらダイエット 郎女
30 テレビにうつる難民キャンプ 百
31 イマジンの世界は夢か幻か 栞
32 旅券片手に一人まごまご ふない
33 出迎へを探すに広きコンコース 不夜
34 栄転万歳叫ぶグループ 私
35 慣れ住めばいづれ都となりぬべし 私
36 月も絵になる山小屋の窓 夏月 栞
二ウ
37 酒のほかたらぬものなしほととぎす 夏 私
38 朱に染む頬に風そよと吹く 郎女
39 洟垂れが長じ凛々しき美少年 恋 私
40 惹かるる我の少し悔しき 恋 不夜
41 片腕を抱きて眠りし日々遠く 恋 栞
42 杉線香に祖母おもひ出づ 私
43 整理する納戸に色の褪せし箱 不夜
44 鑑定せずんば永遠にお宝 私
永遠(とわ)
45 かりがねや手の打ち見せぬ骨董屋 秋 百
46 矢張りねばりを見せん新蕎麦 秋 私
47 べレルマン受賞断り茸狩り 秋 百
48 3D表示で月の痘痕を 秋月 栞
49 幼子に仮と実との区別なし ふない
50 餅花の咲く枝にのばす手 冬花 郎女
三オ
51 桃割れとふくら雀にポーズ付け 氷心
52 巨匠の声の響くスタジオ 不夜
53 我が輩の辞書に妥協の文字はなし 私
54 俳句南画とどれも一流 百
55 マンネリに原点回帰を呼びかけて 私
56 熱海を目指す鈍行列車 ふない
57 新聞を畳む仕草で合図する 栞
58 内弁慶の亭主操縦 私
59 プロポーズ誘導された感もあり 恋 百
60 生活感ない彼が気がかり 恋 私
61 いつまでも口を開けば夢ばかり 不夜
62 グラスのこほり水に返りぬ ふない
63 うたたねの肩叩かれる夜明け前 郎女
64 うつつへ戻すしげき囀り 春 私
三ウ
65 初花を見つけて帰る散歩かな 春花 百
66 新入部員はしる川土手 春 ふない
67 鉄橋に貨物列車の影朧 春 私
68 絵筆に水をつけてなぞれば 不夜
69 学ぶとは型をしょつぱな真似ること 私
69 伝説の秘宝の在り処ひらめきて 栞
70 書にある如く旅支度せむ 郎女
両句に
71 消閑をせんと棚より引き出せし ふない
72 地図で物色次の山行 私
73 頬寄せてまるで磁石のNとS 恋 氷心
74 恋はうたかたレモンスカッシュ 夏恋 栞
75 解かれても止まり木すがる籠の鳥 恋 私
76 自由といふはなんと不自由 私
77 文明の便利さ笑ふやうに月 秋月 不夜
78 ひややかな部屋光る液晶 秋 ふない
名オ
79 ミステリードラマ仕立ての村芝居 秋 栞
79 秋黴雨半身かくす新タワー 秋 私
秋黴雨(あきついり)
80 能面めきて歩く群衆 不夜
両句に
81 かつぎたる先生は民に起訴されて 私
先生(せんせ;岩手弁)
82 宮沢賢治雨にもまけず 百
83 得意げな子の暗唱の後を追ふ 私
84 路地を横切る痩せた黒猫 栞
84 どっこいしょっと跨ぐせせらぎ 氷心
85 ゆきゆけど木曽路はずうつと山の中 私
両句に
86 やつとコンビニ見つけ昼食 不夜
87 風ぬくしわざと知らない町迷ふ 春 私
88 朧月夜に珈琲香る 春月 百
89 花の宿写しブログにアップする 春花 私
90 寄る年波のはやみ行く春 春 私
91 時の舟漂ふ先の水鏡 栞
92 のぞけば目高顔をよこぎる 夏 不夜
名ウ
93 片岡の葦のさやげる夏の宵 夏 百
94 人ならぬもの何を思はむ 郎女
95 あらたしき社殿はカフェを併設す ふない
96 しる粉の椀に浮かぶ御鏡 新年 氷心
97 食ひ延ばしきたるおせちの消えるころ 新年 私
98 社会復帰の用意とゝのふ 不夜
99 穴倉に別れを告げて地に出づる 栞
100 いつか大樹となるを夢みて 郎女
※ 特にことわりがなければ、同じ番号の句は、最後の句に次の句が続いたことを示す。
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