第二百韻 『梅雨明の』の巻
2010.8.22~2010.9.20
1 発句 梅雨明の窓といふ窓開け放つ 夏 氷心
2 脇 いよいよ高き雲の峰々 夏 私
3 第三 草原を過る影追ひ旅立たん 草栞
4 旧き鞄の底に反故紙 ふない
5 朋輩を思い起こさす葉鶏頭 玄碩
6 トワイライトに適ふかなかな 秋 私
7 月今宵恐竜の居た地層過ぎ 秋月 百
8 燈籠のごと魂導かむ 秋 彼郎女
魂(たま)
初ウ
9 酸漿をうまく鳴らせぬ口惜しさ 秋 氷心
10 いつしか消ゆる犬の遠吠え 栞
11 生ゴミを漁る鴉のたくましき 不夜
12 祖父の代から公文に通い 海霧
13 扁額の家訓『忍耐』茶にあせて 私
14 紙片添へたる紅き冬薔薇 冬 氷心
15 あかつきに積雪重き戸を押せば 冬 ふない
16 後悔せぬと誓ふ駈け落ち 恋 栞
17 薄氷のわれて無邪気に笑ふきみ 春恋 私
薄氷(うすらひ)
18 耳を澄ませば鳥も囀る 春恋 氷心
19 ひとゝほり愚痴述べあつて仰ぐ花 春花 私
20 そろそろ団子召し上がりませ 彼郎女
21 塗り替えて秩父観光案内図 百
22 あとが恐いとゆづる行き先 私
二オ
23 正夢となりし津波が押し寄せて 栞
24 無人の村にサイレンの音 ふない
25 山路きて身の引き締まる熊注意 私
26 二度あることは三度もありと 百
27 再会に話の継穂さぐりかね 恋 ふない
28 浴衣に似合ふ髪型を褒め 夏恋 栞
29 踊子の君をはげます控え室 夏恋 不夜
30 パリのオペラ座謎の大火で 海霧
31 郊外の民宿にはかに人気出る 私
31 繁華街きれいにしたら閑古鳥 私
32 ボージョレヌーボ 予約低迷 秋 百
33 氷輪の雫呑みたし杓もなし 秋月 栞
34 酔ひやや醒めて穂草抜き噛む 秋 私
35 ちかごろの案山子小癪に娶りたる 秋恋 氷心
36 をさなきときのちぎりむなしき 恋 私
二ウ
37 御屋敷は庭もろともに跡も無く ふない
38 袋小路にならぶ建て売り 私
39 はじめから垣根なければないですむ 私
39 蟻の巣のわずかな土に出来ており 夏 百
40 気にせず伸びよジャスミンの蔓 夏 彼郎女 (両句に)
41 自然派でクーラー嫌いじや済まぬ候 夏 私
42 けふも巷に救急車ゆく 不夜
43 生きている証ありとて記録付け 栞
44 履き違へたる個人情報 私
45 料亭の顔と言はれし下足番 氷心
46 遊びがつくるにんげんの幅 私
47 月おぼろ盃に落花のひとひらを 春花月 百
48 軟東風吹きて揺れる篝火 春 栞
49 春の陣戦勝祈願の連歌巻く 春 私
50 部室の壁を飾る賞状 不夜
三オ
51 かえりみるライバルの顔なつかしき ふない
52 美化されてゆく遠き初恋 恋 私
53 迷ひつつ最後は君の懐に 恋 栞
54 まだ間に合ふか判らぬけれど 彼郎女
55 買ひ替へるたびにランクはダウンして 私
56 アクセル踏めど加速ぼちぼち 不夜
57 銀盤の女王にシーズンオフはなし 私
58 城跡の空梅雨の前ぶれ 夏 海霧
59 鉢洗い縁側に置く風知草 夏 百
60 茶によぶ妻のこゑのうれしく 私
61 孫からの電話は何の報せやら 彼郎女
62 予選通過で忙しくなり 栞
63 のど自慢はなから狙ひ熱演賞 私
64 身振り手振りにこめる情感 不夜
三ウ
65 本離れ歯止めとなるや読み聞かせ 私
66 つひに寝待ちを愛づるあたはず 秋月 氷心
67 ドプラーの幻想曲に秋思濃く 秋 栞
68 紅葉且つ散る旅の残影 秋 百
69 そゞろ神やすみ給へよ人の庵 私
70 屋根より延ばす短波アンテナ ふない
71 北鮮へ「しおかぜ通信」花だより 春花 百
72 凪のかなたに蜃気楼たつ 春 私
73 ウィスキーお好きでしょうと亀鳴けり 春 百
74 犬にせがまれ回るほろ酔ひ 私
75 気が付けば散歩どころか探検に 栞
76 輪をなす石に古代の秘密 不夜
77 どの国も歴史の果ては神話なり 私
78 聖地とやらに何を求めん 彼郎女
名オ
79 大いなるもの万象に遍満す 私
80 その一粒もそうだったかも 百
81 あのときにあゝしてゐればと思ふ秋 秋 私
82 十六夜過ぎて千々に乱れる 秋月 栞
83 見るひともなく咲き散るや萩の花 秋恋 私
84 寄せる想ひに玉の露落つ 秋恋 彼郎女
85 たえまなき鼓動が刻むうみの波 私
86 一本釣の魚信待つ間を 不夜
87 目覚ましによしなしごとを呟きて 栞
88 為替介入銭関心事 百
89 パソコンの画面チラチラ偏頭痛 不夜
90 花前線の今日はどこまで 春花 百
91 仕舞ふのはいつが良からん春炬燵 春 彼郎女
92 菫を挿した香水の壜 春 ふない
名ウ
93 妻として誠実な愛を貫いて 恋 百
94 浮つくぬしを待つ身くるしき 恋 私
95 バーチャルの世界に一人慰むる 恋 栞
96 機械とからだ繋ぐケーブル 不夜
97 クリスマス奇跡がおこる予感する 冬 百
98 雪天あふぎ吠える狼 冬 私
99 かなしみを帯びる響きに振り向けば 彼郎女
100 ノスタルジアの丘は霞みぬ 栞
※ 特にことわりがなければ、同じ番号の句は、最後の句に次の句が続いたことを示す。
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