第八百韻 『垂乳根の』の巻
2011.04.01~04.18
1 発句 垂乳根の母ふと寂し弥生尽 春 夢
2 脇 はらはら肩にかゝる花びら 春花 私
3 第三 洋上の東風異国より来たるらむ 春 ね子
4 小瓶に詰めた手紙拾ひて 草栞
5 モチベーション溢れるままに曲作り リュウ
6 気づけば空のいろ移りけむ 郎女
7 黙つても気詰まりしない旧き友 私
8 汝が名忘るる我を許せよ 不夜
初ウ
9 秋彼岸一輪早き契草 秋 夢
10 蟷螂なればいつそ食はれん 秋恋 ね子 蟷螂(たうろう)
11 共寝して月を見上ぐる怠け者 秋月恋 ふない
12 若き牡鹿の声懐かしき 秋恋 夢
13 立ち寄ったマンガ喫茶はレトロ風 リュウ
14 一反もめん暖簾にいかが 栞
15 もの売りの吐く息白き勝手口 冬 不夜
16 討ち入りの日は遂に決せり 冬 私
17 ネクタイを結んでほどきまた結ぶ ふない
18 迷路のごとき地下駐車場 ね子
19 買ひだめは駄目と知りつゝ弥次郎兵衛 私
20 両手に何を持ちて帰らむ 郎女
21 倒産の倉庫整理の明易し 夏 不夜
22 酒酔星は泪色して 夏 リュウ
二オ
23 短冊に夢書きし子も嫁ぎ行き 夢
24 猫と煮干を分け合うてゐる ね子
25 幸せは己が心で決めるもの 私
26 レモンかじりし君の目が言ふ 秋 夢
27 密やかな仕掛けのごとく稲つるび 秋 栞
28 花野に落ちる鉄塔の影 秋 ふない
29 有明にシベリア鉄道驀進す 秋月 リュウ
30 寡黙な客の髪は砂色 不夜
31 吉原の遊びが過ぎて縁切られ ね子
31 同じ席いつものあれを注文す 郎女
32 忘れられぬは馴染みのにほひ 郎女 両句に
33 一押しのパン屋にはかに店仕舞 私
34 霙の濡らす貼り紙の文字 冬 不夜
35 束の間に聖樹映せるマッチの火 冬 栞
35 かたしきの袖の時雨も氷つき 冬恋 夢
36 覚めぬ夢こそ永久に見まほし 恋 夢 両句に
二ウ
37 ときめきの薄れるころにつぎの恋 恋 私
38 自転車操業せねば回らず 栞
39 母の日は母を休ませ母代はり 夏 ね子
40 白玉茹でる大鍋の湯気 夏 ふない
41 「トルコ風呂」淫らと言われ丸くなり 夢
42 絵は省略とデフォルマシオン 私
43 爆発の後もじわじわ熱帯びて 栞
44 空と海とのまぐはひの刻 リュウ
45 明星が口に飛び込み大悟する 私
45 見つけたよ、何を?ってほら永遠を 夢
46 理解者なくば天才ならず 不夜 両句に
47 むだ口を叩き喫茶の夜は更けぬ ふない
48 入学式を終えて一息 春 郎女
49 花見する人を横目の忙しさ 春花 不夜
50 芋は煮えれど棒鱈煮えず 春 夢
三オ
51 レシピには載せぬ秘伝のありぬべし 私
52 微妙な違ひたれも解らず 栞
53 八百長の噂に力士押し切られ ね子
54 切り返せずに首捻りつつ 私
55 仮免許にて舵をとる無鉄砲 不夜
56 由良のと渡るお七じゅうろく 夢
57 愛しさの増せば苦もます狂ほしさ 恋 私
58 文も寄越さぬ君のつれなさ 恋 郎女
59 巻き湯葉に結び針魚の春の椀 春 夢 針魚(さより)
60 ちらちら雛をみてはおすまし 春 私
61 篝火のただ煌めきて朧月 春月 夢
62 橋のたもとに狂女舞ふゆめ ね子
63 語り聞く遠き昔の人柱 不夜
64 伝へる術も今はブログに 栞 術(すべ)
三ウ
65 あへてする告白炎上期してをり 私
66 時に汚名も売名となる 私
67 上げ下げはムードで変はるマスメディア 私
67 ロックスタードラッグの沼玻璃の蓮 夏 夢
68 うつけ者こそ覇王の乱世 夢 両句に
69 創造に必要なのは非常識 私
70 グラスの底に顔よあれかし 不夜
71 二丁目に河岸を変へたか人相見 ね子
72 おねえ口調は処世術なり 私
73 ACのリフレインには愛想尽き 栞
74 カフェdeブレイク気分さはやか 秋 私
75 はじかみの鮮烈にして秋の鯖 秋 夢
76 柿の一葉を添える去来忌 秋 栞
77 風そばふ嵯峨のまほらの花紅葉 秋花 私
77 面影や仕舞ひも出来ぬ花灯籠 秋花 夢
78 消せぬ炎のいと浅ましき 恋 夢 炎(ほむら) 両句に
名オ
79 我が魂を結び留めむ君いづこ 恋 ね子
80 祈れば来たるものならなくに 郎女
81 みちのくのしのぶるたみにさちよあれ 私
82 ラピスラズリの夕闇の下 栞
83 工房に絵の具をつくる音しきり 不夜
84 身を粉に砕く様のうつくし 私
85 香味触フリーズドライで進化して 夢 香味触(こうみそく)
86 軽さの価値を思ひ知る山 私
87 朝寒に師僧笑って震へをり 秋 ふない
88 敗荷といふ美学もありて 秋 ね子 敗荷(やれはす)
89 名月の酒に飛び出すアート論 秋月 私
89 夜も更けて猪口に映るは後の月 秋月 栞
90 飲み干したればしばし去れ友 不夜 両句に
91 ひもとけば古今の知己のそこにあり 夢
92 頁のノドに紙魚が隠れる 夏 ふない
名ウ
93 暑がりにあはせ設定する温度 夏 私
94 ウルトラマンも弱る節電 栞
95 ヒーローになるもなれぬも時の運 郎女
96 ただひたすらに追ひかける夢 不夜
97 帰郷する球児の頬に花の風 春花 夢
98 斑雪は吉と出でし山肌 春 私 斑雪(はだれ)
99 げんげ田に農作業車を走らせて 春 ふない
100 春祭り待つ友ら楽しも 春 ね子
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