第九百韻 『復興の』の巻
2011.05.01~05.28
1 発句 復興のそら泳ぎゆけ鯉のぼり 夏 ね子
2 脇 疎林にわか葉のもどる山里 夏 私
3 第三 廃屋の方に薪割る音のして 不夜
4 煮炊きをすれば生きた心地に 草栞
5 順繰りと臓腑に染みる燗の酒 冬 夢
6 年用意にはぬかりなきなり 冬 私
7 越せぬ瀬を越して安堵の息ひとつ 不夜
8 夜逃げの友が呉れし絵手紙 ね子
初ウ
9 もとの身のまゝに過ごせし我の居て 郎女
10 むかへの夫にきつく釘刺す 私 夫(つま)
11 欠け落ちたジグソーピース見つけ出し 栞
12 太宰治を繙く夜に 夢 繙く(ひもとく)
13 春風にとゞめ難きは恋ごゝろ 春恋 私
14 ふらこゝ揺すり誰を奪はむ 春恋 不夜
15 そのかみの朧月夜が胸焦がす 春月恋 ね子
16 熊座に宿る淡き星影 栞
17 偉丈夫に添ふ花嫁の麗しく 雑花 私
17 触れないで我が花言葉は復讐よ 雑花 夢
18 たおやかさほど怖いもの無し 夢 両句に
19 午睡覚め県居の大人独りごつ 夏 不夜 県居の大人(あがたいのうし)
20 大江戸線に置き去りの傘 ね子
20 紙魚の痕にも意味あらぬかと 夏 郎女
20 風鈴売りの初声を聞き 夏 夢
21 まどろめば膝より落つる文庫本 郎女 三句に
21 ハネ怖しお洒落もしたし絽の着物 夏 夢 三句に
22 せめてセレブに近場クルーズ 私 両句に
二オ
23 別荘を徘徊しては品定め 栞
24 ジャーナリストの性は禿鷹 不夜
25 英国の新婚夫婦を憂ひをり ね子
26 八月尽に大輪の薔薇 秋 夢(+栞)
27 秋暑し“亜熱帯化”に真実味 秋 私
28 蜻蛉を知らぬままに育ちて 秋 ね子 蜻蛉(とんぼ)
29 屋上に玉兎を愛づる都市暮らし 秋月 不夜
30 機械仕掛けのホームシアター 夢
31 印籠が出ると悪党平伏し 私
32 不幸で終はる大団円なし 私
33 闌を待たずして散る壬生の花 春花 夢
34 春闘といふ年中行事 春 ね子
35 つい朝寝髪気にしつつ論を張る 春 不夜
36 夫婦喧嘩も三日目になり 恋 ね子
二ウ
37 遺されたルージュ愛しく後追ひて 恋 栞
38 罠としりつゝ嵌まる駆け引き 私
39 木偶となる快楽もありて傀儡師 夢 快楽(けらく)傀儡師(かいらいし)
40 失脚懲りずに狙ふ政権 私
41 風評も七十五日で治めたし ね子
42 旅路の果てに山梔子香る 夏 夢
43 擦り切れたサドルの革に汗の染み 夏 不夜
44 ブレーキつよく握る坂道 郎女
45 やまぎはゝ釣瓶落して照り残る 秋 私
46 棚田の縁に曼珠沙華咲き 秋 栞
47 前掛の地蔵の胸に赤い羽根 秋 ね子
47 面影や袖の涙に宿る月 秋月 夢
48 年経る布の色あはれなる 不夜 両句に
49 漂泊の詩人の影を追慕して 私
49 乳を絶つ愛しき痛みよみがえり 夢
50 なほ脛齧るわが子気遣ふ 私 両句に
50 殻破らんとする鳥見つめ 栞 両句に
三オ
51 凩に道行く人は襟立てて 冬 ね子 両句に
52 あたかも心隠す如くに 不夜
53 如何に舞はむ瀕死の白鳥人の身で 夢
53 指先でノの字を書いて微笑せり 郎女
54 魔法の呪文あれば重宝 不夜 両句に
55 エクスペリアームス大佐覚悟せよ 栞
56 外堀埋めて男を落とし 恋 夢
57 横恋慕他人のものはよく見える 恋 私
58 監獄ロック愛欲の果て 恋 栞
59 各部屋に同じかたちの同じ空 郎女
60 合わせ鏡に∞の私 夢 ∞(むげん)
61 1と2で世を支配するコンピューター ね子
62 あやなくさめるはるのよのゆめ 春 私
63 引き潮の沖に出てゆく花筏 春花 不夜
64 涅槃の西風ふと止みて凪 春 夢
三ウ
65 胸はだけライダースーツ舌打ちす 不夜
66 発車ブザーの響く改札 夢
67 みなし児の名を呼ぶ声もかき消され 栞
68 初夏のプリンス・エドワード島 夏 ね子
69 青芝のうねりて赤き屋根の家 夏 不夜
70 まだ宵ながら月涼しげに 夏月 栞
71 夕化粧白きうなじのにほひ立ち 秋恋 夢
72 けふは秋刀魚とばれる愛の巣 秋恋 私
73 刈田づらその一隅にミニ戸建て 秋 私
74 虫の音深く夜を護れり 秋 ね子
75 サイレンに和すは無駄吠えとは言へず 私
76 鼻にもかけぬ捜査能力 栞
77 香水で“異文化交流”感づかれ 私
78 シルクロードを西へひた行く ね子
名オ
79 強東風に今日もひねもす黄砂舞ふ 春 私 強東風(つよごち)
80 麗らかな海待ち遠しくて 春 栞
81 名にし負ふGENPATSU近く馬酔木咲く 春 ね子
82 花はつぼみと下見報告 春花 私
83 温暖化実は真つ赤なうそらしい 私
84 ネットサーチで俄かべんきやう 私
85 初恋の歴女と語り明かさうと 恋 ね子
86 かのひと追つて旅のやど替へ 恋 私
87 余らせた青春切符握りしめ 栞
88 日焼けの肩が思ひ出となる 夏 ね子
89 尾根道をなきつつ過る杜鵑 夏 私
90 通ひなれたる若狭人待ち 栞
91 雲間からやうやう出でて後の月 秋月 ね子
92 庭の白茅にやどる老蝶 秋 私 白茅(ちがや) 老蝶(おいちょう)
名ウ
93 つゆのみといへどおぼえずながらへて 秋 私
94 あらたに見ゆる秋のゆふぐれ 秋 栞
95 かしましき娘三人嫁がせて ね子
96 わたし好みに亭主改造 私
97 初めてのパスポート取り服選び ね子
98 胸も高鳴る登竜門へ 栞
99 祈りにも似たる今年の桜咲き 春 ね子
100 経読鳥のこゑも清やけく 春 私
PR